海の日

地獄で生きる

三月五日

夜明けのまちが好き。あと夜明けと、夜の空港も好き。母が旅行好きだったので小学生のころよく連れて行ってもらっていたのだけれど、その中で一番覚えているのは空港に向かうまでのバスだ。次点で朝の飛行機から見える滑走路。空港には朝早い、四時発のバスで向かっていた。六時とか七時とかの飛行機にのるから。電車じゃ間に合わないのだ。そのバスの中で夜中がだんだん朝になっていくのを見ていた。四時のバスに乗るには最低でも三時には起きなくちゃならないのでとても眠かったのだけれど、それでもその景色が見たくて頑張って起きていた。朝になりかけのまだ夜中の空気の中で、バスの窓から見える東京タワーが光っているのを見るのが好きだった。それだけのために旅行に行きたいくらいは好き。今でももずっと。あと朝の空港も好き。あのお店がほとんど何も開いていないけれど、これから何かが始まるという気がするからわくわくする。空港はなんでも好き。飛行機も。離陸するときと、着陸するときに見えるあの小さな光の点線が好き。朝はもう忘れてしまったけれど、夜の光の点線は本当にきれいでびっくりした。飛行機の中でもってた楽しさみたいなものと、すこし不安みたいなものが混ざり合った感情も好きだ。旅行に行きたい。沖縄とか、鹿児島とかに。

昨日と今日は二日間とも出かけた。昨日は母と、今日は友だちと。お休みの日の二日間とも出かけるのは久しぶりのことだったので少し疲れてしまったけれど、とても楽しかった。楽しかったせいで不安になるくらいは楽しかった。楽しいと不安になるのでそこそこの楽しさがいい。前にその話をおいしゃさまにしたら「それはどういうことですか」と言われたことがある。たぶん普通の、なんともないひととはすこし違うのかもしれないとそのとき思った。わたしもなんともない人なのだけど、なんともあるのかもしれない。昔はなかった気持ちだと思うから、高校生くらいの時から出てきたんだと思う。よくわからない。よくわからない気持ちばかりある。